実績ストーリー

過去と未来を見すえる「古民家再生」の価値

長谷川工務店

取材日:2019年1月9日

加茂市矢立にある「長谷川工務店」。現社長の長谷川一良さんがお父様から会社を継いだのはちょうど昭和が終わるころ。そして平成の時代が過ぎようとしているいま、長谷川工務店も次代に向けた取り組みを強めています。といっても、それはむしろ原点に返るベクトル。昔ながらの大工仕事です。

「私が会社を継いだころ、大工にはみんな技術がありました。ところがハウスメーカーさんが台頭するにつれて、大工の仕事の中身がどんどん変わってきた。長谷川工務店もメーカーさんのお手伝いをしたことがありましたが、職人たちが言うんですよ。『こんげ仕事嫌ら』と。自分達の技術を活かす仕事ではない、と」。

まだ試行錯誤中だった一良さんは、協栄信組が当時開いていた経営者の会「ビジネスクラブ」に参加。これからの工務店のあり方を探っていました。そこで知ったのが「シックハウス」というキーワード。そしてタイミングよく出会った日本民家再生協会。一良さんの方向性は決まりました。

「職人の技術を活かして、昔ながらの無垢の木を使った家づくりに励もう」。
仕事の数は減るかもしれない。それでもやってみよう。大工の技術をより高めるため、古民家の再生も手がけるようになりました。現場に出ると本物の「木」の持つ生命力に改めて驚くことばかり。100年、150年経った材料が、いまでもきちんと再生できるのです。

「私が手がけた一番古い物件は長岡市の『お福酒造』のご自宅で、築250年でした。中越地震に遭った建物は大きな被害を受けていましたが、倒壊はしていなかった。柱や梁といった建物の骨格にあたる部分がしっかりしていたからです。そもそも250年も家として使えていたこと自体がすごい。非常に価値がある建物だったので、気持ちを込めて修復しました。いまでは『岸家住宅主屋』として国の登録有形文化財に指定されています」。

100年使える住宅提案のために

古材の良さ、伝統工法の確かさ。それらを古民家再生で実感した一良さん。きちんと造れば現代でも100年使える家が作れる。無垢の材料を使えばシックハウス症候群も防げるはず。けれどそれをアピールする場がありません。

「古材を使って、無垢の木をあしらい、そこに現代の便利さをプラスすればこんな素敵な家になる! 木の手触り、香りはこんなにも素晴らしい! 伝えたいことは山ほどあります。言葉では尽くせません。だからショールームが欲しかったんです。新築のショールームはたくさんありますが、古材を使ったショールームはありませんでした。それを作りたかった」(一良さん)。

そこでかねてから付き合いがあり、相談しやすい協栄信組に足を運びました。案件は支店長から理事長へ。そして理事長の「是非やりましょう」という協力を得て、ショールーム建設が現実のものとなりました。平成23年のことです。

現在、長谷川工務店を担当する協栄信組加茂支店の若林祐樹支店長は、融資の背景をこう推測します。「地域の人たちの新しい試みに対して、積極的に支援をしたいという気持ちが強かったのだと思います。また、長いお付き合いのなかで社長の人間性も存じていました。この方なら大丈夫という信頼感もあったのではないでしょうか」。

かつての材料置き場に、二階を増築。そこをまるまるショールームにしました。

天井に横たわる黒々とした梁は150年を経た古材です。扉の一部には土蔵の戸をそのまま使います。壁はもちろん漆喰で、無垢の木で組んだ床はスリッパではなく素足で歩くことをお薦めします。

「このショールームではあまりこちらから提案はしません。足を運んでいただいて、あちこち触ったりしていくうちに、お客様の中に自然とイメージが固まっていきます。あとはそれを形にするだけ」(一良さん)。

成約率は「ほぼ全て」だそうです。

得意分野を活かして地域の課題に挑む!

この物語にはまだ続きがあります。娘婿の貴志さんが「カクチョー不動産」を立ち上げ、「次」を見越した商いを始めたのです。ここにも実は一良さんの考えがありました。

「40歳を過ぎた娘婿が、これから大工職人を目指すのは難しい。けれど職人の仕事を作ることはできる。仕事があれば、うちの職人も生きていける」。宅地建物取引主任者の資格取得の後押しをしました。

「私はまだままだ目利きができませんから、古民家など価値があるかな?という物件については社長に見てもらうようにしています」(貴志さん)。それぞれの領分をうまい具合に結びつけ、事業の幅を広げます。貴志さんは「加茂農泊推進協議会」なるものにも参加し、地元農家やさまざまなジャンルで活躍する人々を巻き込んで、地域の活性化も図ります。農業体験と民泊をセットにしたこの試み、すでに首都圏や海外からのお客様に人気です。

「このショールームも、民泊施設として活用できます。民泊を仕掛けることで、将来的に空き家の有効活用に繋げられれば。これからの加茂市には、空き家問題が大きな課題としてのしかかって来ます。そのマイナスを逆手にとってプラスにしたい」。貴志さんは全国の青年経営者が参加する異業種ネットワークや協栄信組主催の若手経営者の会「コスミック」にも積極的に参加し、地域の仲間に声をかけます。そんな活動の一環で空き家を回ると、ひょっこり古民家が見つかることもあります。一良社長の目利きで「価値あり」と判断された物件は、長谷川工務店の巧みの技でリフォーム。新たな民泊施設として活用を図ります。地域の課題を解決するだけでなく、付加価値を加えて地域の魅力に変えていく−。「貴志さんは加茂市という地域の将来を見据えて頑張って下さっています。空き家問題など、これからの加茂市の課題に対する積極的な取り組みに、個人的にもエールを送りたいですね」。若林支店長も加茂市の将来を託し、熱いエールを送ります。

長谷川工務店ウェブサイト

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